じっくり語り語られてみよう エントリーNo.17

イベント 『じっくり語り語られてみよう』 に参加し,
作品について語っています.
作品へのネガティブな表記・ネタばれを含む場合がありますが,
イベントの趣旨に乗った上での記述とご理解ください.
他の方の語り記事一覧 → 『No.17: 真 手描き「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」

 

 
書店P
 
 
まず、語る側である私の事前情報を。
1:「アイマス」の遍歴は↓をご参照ください。
 
マイリストから見るアイマスにハマっていく過程
http://d.hatena.ne.jp/sabushin/20081011/1223715653
 
2:「書店P」の作品に関しては全て観てます。
この動画は今回初視聴です。
3:「MA-04」は未購入です。
ちなみにこの曲が使われた映画「スワロウテイル」も観てません。
このような人間が語ります。参考にする・しないはおまかせします。
 
続いて、語られる側の書店Pによる【語り視点の注文】を確認。
1:どのぐらい動画として見れるか(絵の羅列になりすぎてないかどうか)。
2:真の普段の魅力とは違うものを詰め込んでみたけどどうでしょう。
3:もし思いついたら、ここからどんなストーリーを想像できるかを書いてほしい。
 
 
動画であるか否かという見方は、非常に個人的なものになってしまいますが、
私はこの作品を「動画」だと思います。
枚数もかなり描かれてますし、切ない表情と自然な口元に吸い込まれそうでした。
動くところばかりに目が行って視野が狭くなってしまいがちなところを
ベンチ脇に佇み空を見上げるシーンや踏切を歩くシーン、
そして、サビの空への展開。
これら画面全体へと視点を広げさせる演出は素晴らしいものでした。
 
 
「真の普段の魅力」とは、初めのアイマスフォントが示しているのかな。
つまり、ボーイッシュで長ズボンばかり履いて一人称が「僕」で、
ダンスが得意で凛々しくカッコイイところばかり目立つのが
「普段の真」と思いました。
 
翻って、この動画における真は白いワンピースという活動的でない服装、
動きも少なく表情もどこか哀しげ。
そもそもこの曲を真が歌うこと、それ自体が普段とは違った魅力となっている
気がします。
しっとりとしたバラードを歌い上げる真から
失恋した女性の切ない想いが感じられました。
そして、この曲の雰囲気をそのままに
素晴らしい動画にして伝えてくれた書店Pに感謝の言葉を。
 
 
最後に私が考えたストーリーを。
(これより先には勝手気ままな文章がございます。
用法・用量を守り、【自分をしっかり持って】正しくお使いください。)
 
――――――――――――――――――――――――――――――――
 
「え?PV用の撮影もするんですか?」
 
プロデューサー(以下P)の言葉に真は驚いた。
今日は真にとって初となるソロCDのジャケット撮影のために、
都心から国鉄や私鉄を乗り継いで2時間もかかる撮影場所まで来ている。
天気は快晴で撮影も順調に進み、予定よりも早く終了することができた。
スタッフの人たちに挨拶に行こうとする真を引き止めて、
Pは秘密を打ち明けたのだった。
 
「なんでそんな大事なことをボクに黙ってたんですか?」
 
真が当然の疑問を口にするが、Pはすでに答えを用意していたようだ。
 
「真の誕生日プレゼントにしたくてね」
 
ソロCD発売は8月初旬、PVの発売は8月下旬を予定していると付け足す。
真の誕生日は8月29日だ。
 
「…プ、プロデューサー。ありがとうございます!凄く嬉しいです!」
 
その言葉にPが微笑み、真も笑みを返す。
 
「ソロCDもプロモーションビデオも初めてですもんね。気合入れてがんばります!」
「あまりハリキリすぎない方がいいぞ」
 
Pの言葉に怪訝そうな顔をする真。
 
「曲はこの間レコーディングしたばかりの『Swallowtail Butterfly』だ」
 
 
PV用の撮影が始まってからの真はジャケット撮影の時とは全く違った。
つい先ほどまで、白いワンピース姿をものともしない振る舞いで、
屈託のない笑顔をカメラに向けていたものだが。
それが今は、表情は引き締まり、視線はまっすぐ前を見据え、
微動だにせず自然体で立っている。
まるで、正拳突きで板を割る前の空手家のようである。
この歌に対する彼女の想いが、斯様なまでの集中力を要求する。
この曲のレコーディングの時もそうだった。
 
「迷走Mind」や「仮面舞踏会」のようなロックや歌謡曲とは違い、
「Swallowtail Butterfly」はバラード。
歌声に感情を乗せることが自然と要求される。
真の得意とするダンスではなく、歌だけでほぼ全てを表現しなければならない。
これまでにこなしてきたアイドルとしてのレッスンとは一線を画する。
だが、そんなPの心配は杞憂に終わった。
ブース内の真は集中し、声の限り、真摯に歌っていた。
レコーディングの後、Pはすぐにこの曲のPV撮影を社長に直訴し、
今回の運びとなったのだった。
 
結局PV撮影中、真はずっと誰とも話さなかった。
Pもあえて話しかけようとはしなかった。
見守ることだけが今の彼にできることだった。
 
ラストシーンの撮影が終わり、真がプロデューサーの下にやってきた。
 
「お疲れさま」
「お疲れさまです、プロデューサー」
 
そう言ってスポーツドリンクを差し出す、日はまだ高い。
 
スタッフに挨拶をして帰る準備をするうちに、
Pが真に問いかけた。
 
「ところで、最後のシーンでどうして笑ってたんだ?」
 
サビのシーンで真が感極まって涙を流したことに、Pは動揺していたが、
それ以上にその後のシーンで真が一瞬ほほ笑んだことに違和感をおぼえた。
この問いに真はPの顔を瞬間見つめ、訥々と答えた。
 
「えーと、この曲って失恋の歌、ですよね。
夢を追って遠いところに行ってしまった想い人との、突然の別れ。
いつもと変わらない風景だけど、そこにあの人はいない。
自分がその状況になったらたぶん、凄く悲しいんだろうけど、
相手は、その想い人は、別れをどう思ってるのかなって考えてたら、
その答えがちょっとだけわかったから、かな?エヘヘ」
 
そう言って真は笑った。
まるで、誰かの秘密に気づいたときの子供のように。
 
 
――――――――――――――――――――――――――――――――
 
MAには引退、プロデューサーとの別れの後のアイドルの心情を
暗示した曲が1曲入ってると思います。
春香なら「悲しみよこんにちは」で、律子なら「1/6の夢旅人2002」
(私が持ってるのはこの2枚なんですが)
前者は「いつでも前向きな」春香を。
後者は「終わりではなく始まり」である律子を。
真のEDは知らないのですが、この「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」が
その役割なのかなと思いました。
実際は歌詞の2番にあるように、「羽広げ飛ぶ」んですけどね。
「あなたを探し始める」ために。